Chap.6では、自己保持回路を使って、工程歩進制御をおこなう方法について説明しました。
今回は、セット・リセットコイルを使って、工程歩進制御をおこなってみます。
また、複数の工程を並列に動作させることについても考えてみることにします。
7.1 セットコイルとリセットコイル
図7.1のコイルは、セットコイルです。
(セットコイルの表記は、各メーカのPLCにより異なります。ここでは、LD
Cv!の表記に基づいています。リセットコイルも同様です。)
セットコイルは、コイルへの入力がON(1)のときコイルがON(1)となりますが、コイルへの入力がOFF(0)のときは以前の値を保持するコイルです。
真理値表で表せば、表7.1のようになります。
表7.1 M100の真理値表
(図7.1の回路)M0 M100 0 以前の状態を保持 1 1
次にリセットコイルをみてみましょう。
図7.2は、リセットコイルです。
リセットコイルは、コイルへの入力がON(1)のときコイルがOFF(0)となりますが、コイルへの入力がOFF(0)のときは以前の値を保持するコイルです。
真理値表で表せば、表7.2のようになります。
表7.2 M100の真理値表
(図7.2の回路)M1 M100 0 以前の状態を保持 1 0
セットコイルとリセットコイルは、いったん状態が保持されると、それ以降状態を変更できなくなってしまうため、単独で使用されることはほとんどありません。
通常は、セットコイルとリセットコイルはペアで使用し、セット入力とリセット入力のあるメモリとして扱います。
7.2 自己保持回路とセット・リセットコイル
自己保持回路とセット・リセットコイルを並べた回路(図7.3)は、どちらも「セット入力、リセット入力のある記憶回路」であり、全く同じ動作をおこないます。
(以下「セット・リセットコイルを並べた回路」を、省略して単に「セット・リセットコイル」とよびます。)
この回路は、M0をON(1)にすると、M100がON(1)になり、M1をON(1)にするとM100がOFF(0)になります。
M0とM1の両方がOFF(0)のときは、M100は以前の状態を保持します。
ついでにいうと、M0とM1の両方がON(1)のときは、M100はOFF(0)になります。(つまり、リセット優先です。)
真理値表で表せば、表7.3にようになります。
表7.3 M100の真理値表
(図7.3の回路)M0\M1 0 1 0 以前の状態を保持 0 1 1 0
この真理値表は、自己保持回路と全く同一です。
セット・リセットコイルが、自己保持回路と全く同じ動作をおこなうのならば、Chap.6で実行したプログラム(図6.5)をセット・リセットコイルに置き換えても同じ動作をするはずです。
さっそくこれを確かめてみましょう。
置き換えは、図7.4のように機械的におこなえます。
図7.5が置き換えた結果です。
この図では隠れていますが、LD Cv!の文法に合わせてプログラム末にEND命令を入れてあります。
また、起動直後に点灯するランプを緑色にするために、運転1スキャンON(S1E)を使っています。
では、動かして確かめてみてください。
自己保持回路で組んだ場合と同じ動作をするはずです。
(起動直後に緑色のランプが点灯し、Chap.6の図6.3のとおり動作するはずです。)
7.3 複数の工程を並列に動作させる
次に、複数の工程を並列に動作させることについて考えてみることにします。
例題1
床にあるA地点の荷物を、クレーンで釣り上げて移動し、ある高さのB地点へ運ぶ制御をおこないます。(図7.6)
インバータで制御されたモータが2組あり、それぞれ荷物を上下方向、水平方向に駆動します。
このモータの速度は高速、低速の2段階にコントロールできます。
運転開始スイッチ(PB−ウンテン)を押すと、荷物はA地点から45度斜めに上昇しながらB地点方向に向かって「高速」で移動します。
B地点の上下方向(水平方向)に到達したら、以降は水平方向(上下方向)のみ移動してB地点に向かって移動します。
水平方向、上下方向共に、途中に低速開始位置にセンサがあり、荷物がこのセンサを通過(ON)したら、「高速」から「低速」に切り換えます。
図7.6では、先に上下方向に到達した場合の図を示していますが、B地点の位置によっては先に水平方向に到達する場合もあります。
低速開始位置も同様で、図7.6では、先に上下方向の低速開始位置に到達した場合の図を示していますが、B地点の位置によっては先に水平方向の低速開始位置に到達する場合もあります。
荷物がB地点に到達して停止すると、停止ランプ(PL−ストップ)が点灯します。
この制御では、水平方向、上下方向それぞれ独立に低速開始位置と停止位置を検出して、工程歩進制御をおこなわなければなりません。
これを図で表すと、図7.7のようになります。
この図を見ると、左右の工程がそれぞれ別々の条件で進んでいることがわかります。
この図があれば、プログラムは書けるはずです。
I/Oは、表7.4とでも割り付けておきましょう。
信号名 | I/O番号 |
運転開始スイッチ (PB−ウンテン) |
M0 |
上下方向低速開始位置センサ (センサ1) |
M1 |
上下方向停止位置センサ (センサ2) |
M2 |
水平方向低速開始位置センサ (センサ3) |
M3 |
水平方向停止位置センサ (センサ4) |
M4 |
上下方向モータ:高速指令 (INV1−コウソク) |
M100 |
上下方向モータ:低速指令 (INV1−テイソク) |
M101 |
水平方向モータ:高速指令 (INV2−コウソク) |
M102 |
水平方向モータ:低速指令 (INV2−テイソク) |
M103 |
停止ランプ (PL−ストップ) |
M104 |
次回は、これをラダー図に置き換えてLD Cv!上でシミュレーションしてみます。