この章では、24V以上の電圧を扱ったことがない人、3相交流モータを見たことがない人、インバータというとNOTゲートしか思い浮かばない人のために、3相交流モータを回すにはどうすればよいかを解説をします。
とりあえずこれだけは知っておいて、苦手意識をなくしましょう。
4.1 モータを回転させるには
図4.1のように、200Vの3相交流電源R,S,TをモータのU,V,W端子にそのままつなげばモータは回転します。
回転数は電源周波数によって決定され、回転方向はRSTとUVWの対応によって決定されます。
3相のうち任意の2相を入れ替えるとモータは逆に回転します。
たとえば、図4.1で2相を入れ替えてR−V,S−U,T−Wという接続に変更すると、モータは図4.1の場合と逆方向に回転します。
当然のことですがモータに接続されている電源を切ればモータの回転は止まります。
これを実現するには、電源とモータの間にスイッチを設け、スイッチの操作で電源を入切することがまず考えれれますが、感電しそうでちょっと恐いです。
そこで、制御盤の前面にONとOFFの2つの押ボタンスイッチを設け、ONボタンを押せばモータが回転し、OFFボタンを押せばモータが停止するようにします。
ONボタンを押して、その後指をONボタンから離してもモータの回転を止めないで回転し続けるために、Chap.3で説明した自己保持回路を使います。
4.2 自己保持回路
図4.2が、Chap.3で説明した自己保持回路です。
この図でPB1をONボタン,PB2をOFFボタンと考えてください。
前回の復習になりますが、PB1(ONボタン)を押せばR1はONとなり、その後は、PB1を離してもR1のコイルに電流が流れ続けます。
この状態は、PB2(OFFボタン)を押してリレーR1のコイルに流れる電流を切ることで解除します。
なお、左右の母線の電源には、モータの電源と同じRST相の中から任意の2相を使ってかまいません。
4.3 モータの電源をON・OFFする
このリレーR1の接点でモータの電源を入切することにします。モーターには、U,V,Wの3つの端子が出ているのでこれを全部切るには、3つの接点が必要です。
そこで、3相が同時にON/OFFできて、かつ大電流を流せる接点のリレー(?)を使ったのが図4.3です。
これならば、PB1を押したときリレーがONとなりモータに3相の電源が供給されて、モータが回り、PB2を押したときリレーがOFFとなりモータが停止します。
なお、3相の大電流を入切するようなリレーは、リレーと呼ばずに電磁接触器と呼び、MCという記号を用います。
図4.3の通り、接点の記号もリレーとは異なります。
4.4 サーマルリレー
これまでの回路でもモータのON/OFFはできますが、モータに過電流が流れたとき、モータの電源を切ってモータの焼損を防止できればより安全となります。
このような、用途のためにサーマルリレーがあります。
サーマルリレーとは、過電流が流れたときにその接点がONまたはOFFになるリレーです。
サーマルリレーのb接点THR1を図4.4のように自己保持回路の中に直列に入れると、サーマルリレーに過電流が流れたとき自己保持回路の保持が切れモータを止めることができます。
サーマルリレーの検出部は、図4.5のように電磁接触器の接点と直列に接続します。
電磁接触器とサーマルリレーが一体化した部品もあります。
4.5 回転数を制御したい
これまでの話は、モータの回転・停止の制御でしたが、回転数を制御したいときはインバータを使うのが一般的です。
インバータとは、電源周波数を指定された周波数に変換して、これをモータに電源として供給することでモータの回転数を制御する装置です。
ここで「指定された」というのが重要な点で、極端な話、0Vから10Vの範囲の直流電圧をインバータに速度信号として与えることでモータの回転数を制御することもできます。
これで、モータで動いている機械(または材料)の速度をセンサで拾って、この信号を元にインバータにフィードバックをかけて、機械(または材料)の速度を調整することが可能になります。
図4.6にインバータとモータの接続例を示します。
インバータは、始動・停止時の台形制御、正転・逆転の切替えも簡単におこなえます。
最後に言い忘れましたが、RSTの電源は、制御盤に入るとまずフレーカーを通すのが普通です。
今回のChap.4の説明での電源RSTは、ブレーカを通った後の電源と考えてください。